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2006-12-01
概要
19 世紀始め,イングランドの植民地政策により困窮に喘ぐアイルランドは,その食糧供給をジャガイモの栽培に大きく依存していた。しかしそこで栽培されるジャガイモは単一の品種に限られており,遺伝的多様性を欠いていた。 1845 年から数年に渡って流行したジャガイモの胴枯病は,アイルランドのジャガイモを全滅させ,約百万人(全人口の1割ほど)を餓死に至らしめた。また,約二百万人が国外への移住を余儀なくされた。この一連の出来事は「アイルランドのジャガイモ飢饉」 (Irish Potato Famine) として広く知られる。
遺伝的多様性を持たない個体群は,環境の変化による絶滅のリスクを負う。アイルランドのジャガイモ飢饉は,モノカルチャー(単式農法)の孕む危険が現実のものとなった代表的な事例として引用される。また,少し文脈を一般化して,多様性を保つことの重要さを示す教訓として用いられることもある。
アイルランドの植民地化
19 世紀始めのアイルランド農民は,当時のヨーロッパの中でも最も貧しい水準に置かれていたという。清教徒革命以来続くイングランドの圧政が,アイルランドを救われようの無い貧困へと追い詰めていたのだった。
アイルランドは伝統的にカトリックの国だが,隣国イングランドでは 16 世紀以降プロテスタントの力が強まりつつあった。イングランドで清教徒革命が起こると,「カトリック勢力としてのアイルランド」と「プロテスタント勢力としてのイングランド」の対立は決定的なものとなっていく。共和政イングランドの指導者オリバー・クロムウェルは,イングランドの内戦を収拾へと導いたのちに,カトリック同盟の支配する地アイルランドへと軍を向ける。この遠征は大規模な虐殺を伴ったことで知られており,アイルランドの全人口の約 1/3 が殺されるか国外逃亡を余儀なくされたと伝えられている。
護国卿クロムウェル,画像は Wikipedia より (PD)
アイルランドのカトリック勢力が所有していた農地の多くは没収され,イングランド側に配分が行われた。また,カトリック教徒の権利を大幅に制限する法律の数々――「カトリック刑罰法」 (Penal Law) として知られる――が発令される。これらの法律によってカトリック教徒は投票権を奪われ,公職に就くことを禁じられ,教育を制限され,土地の購入を制限され,他にも様々な基本的権利を制限されることとなった。また,土地の一子相続を禁じ,相続者の間で均等に分割することを強制された。この分割相続の強制によって,カトリック教徒が一家族あたりに持つ土地の面積は代を重ねる毎に狭められ,最終的には自給にも事欠く有り様となってしまう。
クロムウェル前(左)後(右)の土地所有の変化,色の濃い地域がカトリック優位,画像は The Ireland History より
1840 年頃,飢饉直前のアイルランドは,自らの所有する土地を年に数回しか訪れないようないわゆる「不在地主」のプロテスタントが支配する一方で,その国土には自ら食す分もままならないような面積の農地しか持たないカトリックの貧農達で溢れ返っていた。彼らの生活は貧困そのものだったが,それを改善するための手立てを打とうにも,彼らの土地にあるものは全て地主の所有に帰すものであって,地主が立ち退きを要求すればそれらを没収することなど造作も無いことだった。結局,全ての努力は無駄に終わってしまうという恐れから,貧農達は何も手を打つことができずにいた。
生命線のジャガイモ
そのような制限された農地において,食い繋ぐのに十分な量を収穫することのできる作物は,唯一ジャガイモしか存在しなかった。現代においてはなかなか注目される機会が無いが,ジャガイモは栄養素に優れた野菜である。ジャガイモは単体でタンパク質,炭水化物,ミネラル,ビタミンを摂取することができる。極論を言えば,人間はジャガイモといくらかの牛乳があれば健康を保つことができる。現に,ジャガイモを主食としていたアイルランドの貧農は,パンを主食としていた他のヨーロッパの貧農よりも健康的ですらあったという。
1810 年頃に「ランパー」 (Lumper) と呼ばれる品種が導入されると,アイルランドのジャガイモに対する依存はより一層高められることになる。ランパー種は従来の品種と比較して栄養面で劣っていたが,少ない肥料と痩せた土地でも栽培が可能であるため,特に困窮の著しい西岸地方から始まってアイルランド全域へと普及が進められつつあった。飢饉直前のアイルランドにおいては,全人口の 30% から 35% もの人々がジャガイモを主食としており,一日三食を全てジャガイモでまかなうことも珍しくない光景になっていたという。
しかし,こうして単一の品種が急速に広められることによって,アイルランドのジャガイモからは遺伝的多様性が失われることになる。ジャガイモは一般に塊茎を使った無性生殖によって栽培が行われるが,そこで増やされたジャガイモは言わばクローンであり,遺伝的に同じ性質を備えたものとして見ることができる。何らかの環境の変化に対して,ある個体は弱く,ある個体は強い,というような差異は存在しない。ある個体が危機に晒されたならば,即ちそれは全ての個体が同様の危機に晒されることを意味している。
胴枯病の発生
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また、日本人による捏造動画かぁ。
日本人は中国大陸に攻めていって、負けそうになると命が惜しくて子供を捨てて逃げ返った最低の民族でしょ(笑)